私をしあわせな女にしてください

「私が好きなのはあなたです」 彼女は俺の目を見てそう言った─── 俺はただの名前のないおじさんだ。 夢もカネもない。 バイト先の若いやつらとは話すこともない。 この世界に存在していないのと大して変わらない そんなおじさんだ。 冬の終わりのことだ。 疲れ切った深夜の電車。 同じバイト先の女の子が酔っ払いたちからしつこく絡まれている場面に遭遇した。 彼女とは口をきいたことさえなかったが、 俺は何の気の迷いか、酔っ払いたちから彼女を助けた。 鼻血まみれになった俺の顔を心配そうに覗き込む彼女は 驚くべきことに俺の名前を呼んだ。 あれ?このコ、俺の名前覚えてたんだ……


※本作は田中ユタカの個人誌作品の電子書籍版となります。【237ページ】
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